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《概要》「支出」ベースのデータに基づいて大恐慌期の財政出動に有効性がなかったとする見解について、実質的に経済活動に影響を与える「発注」ベースの視点が欠けている問題があることを指摘します。・・・・
現下の日本の長期停滞対策としての財政出動の有効性については、クラウディング・アウト効果、変動相場制下等でのマンデル・フレミング・モデルに基づく理論的な否定論(+不況期の経済政策に関する統計的な実証分析)などのほか、歴史上の個別事例の実証分析による否定論がある。
田中秀臣・安達誠司[2003]『平成大停滞と昭和恐慌』(日本放送出版協会)については、いわゆるリフレ政策を主張する立場から書かれたもので、日本の長期停滞に係わるマクロ経済政策と構造改革主義との関係など納得できる議論が多い。
しかし、その中で一点疑問点があるのでここでふれたい。
(具体的には)、図表4-4(88ページ)を見ると、大恐慌期の米国の消費者物価と政府の財政収支の推移を(月次で)比較すると、景気が反転した1933年は物価上昇が先行し、半年ほど遅れて財政収支赤字が上昇している。このため、財政出動による景気上昇で物価が上がるという因果関係は成立していないという。つまり、財政出動の効果は、これからも否定されるとする。
しかし、経済活動の実態を考えれば、これは誤りであるように思える。
そもそも財政収支は支出ベースで捉えられる。ところが、財政出動の効果は発注段階で発生する。企業は、受注と同時に原材料や中間財、建設機械等を発注し、労働者を集め、建設や生産を開始する。つまり、政府支出以前に、発注段階で資金循環が拡大し、それは資材価格や賃金に影響を与える。 したがって財政出動の影響は、支出ではなく契約ベースで見なければならない。
政府支出の原則は、実績を確認してその後に支払うというものだから、経常的な支出以外の支払いの多くは発注から半年〜1年は遅れる。しかし、景気刺激効果は、発注段階で生ずる。
つまり、このグラフは、むしろ財政出動の効果を示していると解釈することが可能であるように見える。少なくとも、これをもって、財政出動の有効性を否定することはできないのではないだろうか。
著者が金融系の先生(金融系の安達先生担当部分)なので、実体経済の動きに関する知識がないための誤解があるのではないだろうか。
実は、7年前に読んだ当時は、こうした問題に気づかず、この議論こそ「財政出動が有効ではない」根拠として、もっとも説得力のある部分だと思っていたのだが、改めてこのように見ると、少なくとも財政政策と組み合わせられていないリフレ政策の有効性は疑問に思えてくる。逆に、財政政策こそが決定的ではないのだろうかと思える。
PS. この補足を「財政出動論2(なぜ財政出動論?)」に書いています。
以上の議論の誤りにお気づきの方は、簡単で結構ですから、理由をぜひご指摘いただければ幸いです。
著者が金融系の先生(金融系の安達先生担当部分)なので、実体経済の動きに関する知識がないための誤解があるのではないだろうか。
実は、7年前に読んだ当時は、こうした問題に気づかず、この議論こそ「財政出動が有効ではない」根拠として、もっとも説得力のある部分だと思っていたのだが、改めてこのように見ると、少なくとも財政政策と組み合わせられていないリフレ政策の有効性は疑問に思えてくる。逆に、財政政策こそが決定的ではないのだろうかと思える。
PS. この補足を「財政出動論2(なぜ財政出動論?)」に書いています。
以上の議論の誤りにお気づきの方は、簡単で結構ですから、理由をぜひご指摘いただければ幸いです。